○患者の権利法をつくる会のなりたち
その名のとおり「患者の権利法」をつくることを目ざすこの会が生まれたのは、1991年10月6日のことです。
「与えられる医療から参加する医療へ」をスローガンにした「患者の権利宣言」案 が発表されたのは、1984年10月14日のことです。
個人の尊厳、平等な医療を受ける権利、最善の医療を受ける権利、知る権利、自己決定権、プライバシーの権利を掲げたこの権利宣言案は、各地での権利宣言運動として展開され、保険医による「開業医宣言」(1998年)や、日本生協連医療部会による「患者の権利章典」(1991年)の発表などを経て、少しずつ「患者の権利」という考え方は広がっていきました。
しかし、1991年当時においても、「インフォームド・コンセント」という言葉は見慣れないもので、医療現場では、3時間待ちの3分診療の中でインフォームド・コンセントを実践するなんて到底無理だという強い抵抗がありました。
そんな中、医療を真に住民の命と健康を守るものとするためには、医療が患者の権利を基盤にしたものであることを、国が法律によって明らかにすることが必要だとして、患者の権利を定めた法律をつくろうと、全国の患者、医療関係者、市民、研究者、弁護士などがあつまって、「患者の権利法をつくる会」を設立しました。
最終目標はもちろん「患者の権利」を定めた法律を制定させることです。
私たちは、「患者の諸権利を定める法律要綱案」(患者の権利法案)ほか、いくつかの患者の権利に関する法律案を発表し、その立法化を呼びかけています。
設立から20年を数える運動を経て、医療法という法律に、インフォームド・コンセントの理念を定めたと評価できる規定が加わるなど、患者の権利をめぐっては大きな進展がありました。
インフォームド・コンセントが誰もが知ることばとなり、今や医療関係者でこの理念を否定する人はいないこと、またがんなどの悪性疾病についても、本人に正しく説明するのが原則となっていることなど、医療現場の常識も大きく変わりました。
私たちは、主に「けんりほうnews」という機関誌を通じて、患者の権利にまつわる情報を提供すると共に、重要な政策決定がなされる時期には、意見書を送付する、国会議員との学習会を開く、他団体と共にシンポジウムを開催するなどの活動によって、患者の権利の法制化に向けて取り組んでいます。
○患者の権利を柱に据えた「医療基本法」へシフト
この20年間、インフォームド・コンセントをはじめとする患者の自己決定権の側面には進展が見られますが、他方で、この20年の間に、医療保障制度改革等によって、私たちの「医療を受ける権利」は危機にさらされています。
この危機を回避するためには、憲法13条の幸福追求権、憲法25条の生存権と「患者の権利」を結び合わせ、医療制度につなげる「基本法」の制定が必要だと考えています。
すべての人の命と健康を守る明日の社会のために、私たちの運動に参加を呼びかけています。